セキュリティソフトの可能性
広告ではなく、販売促進という手法もある。
スーパーの前で実演販売をしたり、街頭で試供品を配ったりといった手法だ。
これも折り込み広告と同様、では山崎夫妻は、新聞の折り込み広告やセールスプロモーションをすれば良かったのだろうか?特殊なターゲットここまで読んでくださった方なら、答はすぐにわかっていただけると思う。
もちろん、折り込み広告やセールスプロモーションでは不十分だった。
大田区や品川区の客に情報を届けることばできたかもしれないが、そうした広告では、関東一円に散らばる潜在的な客にはいっさい情報を伝えることができないからである。
関東一円に散らばっていて、しかも格安チケットを持っていて、そして羽田空港に自家用車で行こうと思っている人-。
ターゲットとしては、かなり特殊である。
こういう特殊なターゲットの人たちに、どうすれば広告を届けることができるのか。
これまでのマスメディア広告や新聞の折り込み広告、セールスプロモーションなどでは、これはほとんど実現不可能だった。
しかしキーワード広告が、その不可能を可能にしてしまったのである。
キーワード広告はインターネットの広告だから、日本全国どころか世界中に広告を届けることができる。
そして「検索するキーワード」に合わせた広告だから、そのキーワードを入力した利用者に絞り込んで広告を届けることができる。
つまりは、日本全国に(世界中に)散らばる特定の人たちに広告を届けることができるモデルなのだ。
これは広告にとっては、巨大な革命となる。
いままで届けられないと思っていた客の層に、どんぴしゃの広告を投げ込むことが可能になるからだ。
そして山崎夫妻の駐車場も、キーワード広告を導入したことによって、劇的に変わった。
二〇〇三年の春ごろのことである。
駐車場ビジネスを始めて、二年が経っていた。
赤字が出続けて、ほとんど貯金を食いつぶし、これでダメならもう後がない、撤退するしかないというところに追い込まれていた。
パソコンをなんとか覚えて使いこなせるようになった妻照美さんが、最初に入札したキーワードは、次のようなものだった。
こんなふうに少しずつ単語を変え、二つの単語の組み合わせを十件ほど登録し、入札に参加した。
同じようなキーワードで入札している業者はほとんどいなかったため、数万円結果は、驚くべきものだった。
旅行雑誌に広告を出していたころと比べ、倍ぐらいの問い合わせがくる。
夏のシーズンになるとさらに客は増え、「キーワード広告を見て予約した」という客が一日に三十人以上に上る日も珍しくなくなった。
車をとうとう収容しきれず、頭を下げて断らなければならない日まで現れた。
このころまで、山崎夫妻は大手旅行代理店に頭を下げようかどうか、悩み続けていた。
旅行代理店のチケット袋にB&B駐車場のチラシを入れてもらい、その代わりに多額のマージンを払うという契約だ。
しかしキーワード広告を始めてみて、その気持ちは完全に消え失せた。
旅行代理店の担当者に会いに行き、「やっぱりうちはやめます」と告げた。
担当者はバカにしたような表情で、こう言い捨てた。
「ずいぶん強気に勝負するんだな」キーワード広告は、顧客にダイレクトに広告が投げ込まれる。
もちろんグーグルやオーバーチュアに広告媒体としての料金は取られるけれども、変なキックバックやリベートを支払わされる心配もない。
きちんと顧客と向き合って、商売を続けていくことができる照美さんは、「旅行代理店のおこぼれをもらうんじゃなくて、自分でキーワード広告を使って一生懸命顧客を開拓するようになって、考え方がすごく変わった」と言う。
「最初はお客さんの送迎も人任せにしていたんだけど、コミュニケーションを大事にしなければだめだということが分かってきた。
だから二回昌のお客さんにはきちんと『前にも来ていただきましたね』と声をかけ、子供には飴をあげたり、冗談を言って笑わせたりと、お客さんとのつながり作りに精を出している。
北海道に行く人には『北海道は寒いよ』と声をかけ、そんな風にやっているうちに、お客さんから旅行先のお土産までもらうようになった。
やっぱりせっかく旅行や出張に行かれるんだから、和やかな気持ちで旅立ってほしいじゃないか。
いまやB&B駐車場の顧客は関東一円に広がり、七〇パーセントが固定客だという。
まるで駐車場の「プロジェクトⅩ」のような話ではないか。
山崎夫妻の駐車場ビジネスが離陸できたのは、グーブルが提供しているキーワード広告があったからだった。
インターネット世界を覆うキーワード広告というモデルは、実に日本の小さな零細ビジネスにまで影響を与えているのである。
グーグルという世界最先端企業の力は、こんなところにまで及んでいるのだ。
くポスト近代ほどうあるべきかという理念に則ってネットをデザインするのではなくて、ながら、試行錐誤の中で最適化された様式を選択していく意志決定システムとしてネットをとらえる必要かあります。
「ロングテール」という言葉が最近、インターネットの世界で大流行している。
英語で「長い尻尾」という意味だ。
並び順は、その商品が売れているかどうか。
このグラフは、かなり昔からマーケティング理論で一般的に使われてきたものだった。
「パレートの法則」「八〇:二〇の法則」という名前で知られている。
どういう意味かと言えば、体の二割ぐらいしかないけれども、金額ベースで言えば全体の八割の売り上げをたたき出している。
一方、Aの商品は売れ筋商を占めているけれども、しかし売上高は全体のだから、その商品を下手にたくさん発売するのではなく、商品数は少なくてもいいからBの売れ筋の商品を頑張って出しましょうというのが、これまでのマーケティングの常識だったのである。
これはどんなジャンルにでも当てはまる原則で、たとえば映画で考えてみよう。
世界中では毎年、ものすごい数の映画が作られている。
アメリカ国内に限っても、おそらくそのはずだ。
となると、映画プロデューサーが狙うべき戦略はただひとつ。
「公開されてもほとんど顧みられないようなマイナーな映画を量産するのではなく、『スター・ウォーズ』シリーズのような大ヒット作を年に一本でもいいから頑張って作るべきだ」という戦略である。
従来は、これが当たり前の考え方だった。
だからマーケティングの分野だけでなく、この人間社会に起きるあらゆることに当てはまるとも言われている。
「会社で売り上げの八〇パーセントを上げているのは、数では二〇パーセントしかいない「働き蟻は全体の二〇パーセントが働いているだけで、その二〇パーセントの働き者の蟻を巣から取り除くと、残りの蟻の中からやはり二〇パーセントの蟻が働くようになる」といった類だ。
ところがこのパレートの法則は、こと商品の販売に関しては当てはまらなくなりつつある。
最近、そんなふうに言われるようになってきた。
つまりここ数年、売れ筋Aの商品だけでなく、これまで死に筋だと思われたBの商品が、なぜか物凄い勢いで売れるようになってきたのである。
原因は明らかだ。
インターネットが出現し、グーグルの高性能な検索エンジンがネット利用の中心となるのに従って、消費者のニーズが劇的に変わってきたからである。
たとえば、オンライン書店「アマゾン」での売り上げ分布を見ると、その傾向はくっきりと現れているという。
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